11月24日
朝6時起床。
やっと時差ボケがなおってきた。
昨日は11時就寝。
夜中の1時に一旦目を覚まし、それから買い付けの事が頭から離れず、目は閉じているものの、脳は活発に動いていた。
今日は同行の彼女が帰る日だ。
早くから蚤の市に行きたかったので、7時過ぎに食堂に行ったが誰もいない。
仕方ないのでテカテカオヤジにクロワッサンを食べさせてくれとお願いに行った。
テカテカオヤジは「わかった、直ぐに用意するから食堂で待っててくれ」と言った。
しばらくするとテカテカオヤジが降りてきて、自らサーバーしてくれた。
サーバーといってもカフェとパンを持ってくるだけ。
食べている途中でパジャマの上にコートだけを羽織ったおじいさんが来た。
それもスリッパのまま。
おじいさん、家と勘違いしてるんじゃないのか。
ガイドブックには部屋から一歩外に出るとそこは公共の場です。
パジャマのまま外に出ない事って書いてあっただろ。
おじいさん読んでないんだな。
それともフランスのガイドブックにはパジャマとスリッパはOKとでも書いてあるのだろうか。
まっいいかおじいさんなんだから。

さて今日は日曜日。
商店は殆ど休みなので蚤の市に行く事にする。
8時半過ぎにメトロに乗ったが、人はまばらで異様な雰囲気である。
会社が休みで乗客がいないからだろうか、それともこの路線が怪しい雰囲気なのだろうか。
途中から車内は同行の彼女と二人だけになった。
凄く怖くなってきた。
もし自分独りなら蚤の市に行かなかったかもしれない。
駅に着いて案内板を見ていたら日本人カップルを発見。
私達はその二人を尾行することにした。
この駅で降りたという事は蚤の市に行くに決まってる。
尾行すれば迷わず蚤の市に行けるか、それとも迷ってとんでもない所に行くかどっちかだ。
その日本人カップルに賭けてみた。
階段を上がり、角を曲がるとテントらしきものが見えてきた。
日本人カップルを見失う、尾行失敗。

蚤の市はスリの宝庫なのでかばんをしっかり握り締める。
最初のお店で日本人の女の子が独りでマダムと交渉している。
ここまで独りで来たのか、賢いね。
その彼女が交渉しているバッグはとてもかわいかった。
隣のお店でかわいいブリキ缶を発見。
欲しい、欲しいけど持って帰るのに苦労しそう。
泣く泣く諦める。
このヴァンヴの蚤の市はガラクタが多いような気がする。
人によって欲しい物が違うので、私がガラクタと思っていても、他の人からみれば宝物かもしれない。
掘り出し物もあるかもしれないし。
この蚤の市は日本人に人気なのかたくさんの日本人に出会う。
お店のオヤジが「ジャポネ」って言ってるのが聞こえた。
見ると、オヤジがお客さんにサイコロを振って、日本ではこう遊ぶんだよって教えているようだ。
よっし、生粋の日本人の私がその遊び方の名前を教えてあげよう。
それはね「チンチロリン」って言うんだよ。
今度からそのオヤジはお客さんに「ジャポネの遊びでね。チンチロリンっていう遊びなんだ」って説明する事だろう。
これでフランスではチンチロリンが通じるようになるんだ。
1日国際親善大使になった気分。
どこまで行ってもガラクタ市は続く。
途中で山積みの靴を発見。
2足セットで山積みされているわけではないので、左右デザイン違いの靴をはく事だってできる。
同じ靴をはきたかったらこの山積みの中から探し出さないといけない。
1日中探したら同じデザインの靴が見つかるかもわからないが、絶対に見つかるという保証はない。
どこまで行ってもガラクタなので引き返す事にした。
引き返す途中でアンティークのミニポスターを発見。
その中から20枚ほど選んで、1枚いくらか尋ねた。
「高かー」
そんな20枚も買ったら今日の予算オーバーだ。
その中から選りすぐりの7枚を選んだ。
お店の兄ちゃんに値段交渉をするが、「これはきれいだからダメ 。他の店に行ったらもっと安いのがあるから他の店に行ってくれ」って言われた。
私も嫌われたもんだよ。
そこまで言われたら仕方ない。
どうしても欲しかったので、兄ちゃんのいい値で買う。
ボッタクられてんのか適正価格なのかわかんないや。
途中でかわいいバッグを発見。
お店のマダムに値段を聞くと買ってもいい値段である。
かばんの裏地が汚いのを除けば買いだと思う。
何度も持って合わせてみた。
どこで聞き間違えたのか自分達が思っていた値段より本当は倍の値段である事がわかる。
それはちょっと高すぎ。
泣く泣くバッグを諦める。
日本人の女の子が始めに交渉していたお店まで戻ってきた。
バッグがいくらか気になる。
マダムに聞いてみた。
「高すぎ」いくらなんでもそんな値段では買えないよ。
このバッグも諦め今度はクリニャンクールの蚤の市に行く事にした。

この蚤の市は蚤の市の中でもいちばんの規模。

13年前に友達がスリに遭った場所だ。
今度は私がやられるかもわからない。
スリに注意しながら進む。
規模がいちばんというだけあって凄い人だかりだ。
という事はスリもすごい数なんだろう。
どの人を見てもスリに見えて仕方ない。
「お前もスリか。お前もか」と言いながら進んで行く。
この蚤の市は10の区画にわかれている。
その中でも蚤の市の発祥の地でもあるヴェルネゾンという区画をくまなく周る事にした。
横道をそれたら同じ道には戻って来れないのじゃないかと思うほど迷路のようになっている。
その中でアンティークのキーホルダーを売っているお店を発見。
ディスカウントして欲しいって言ったらバカにされた。
こっちはフランス語が話せないので、抗議する事もできない。
なぜこんな悔しい思いをしてまで買わなきゃいけないのかと思ったがぐっとこらえた。
店のお姉ちゃんは私の顔を見て「Don't cry」って言ったが、私泣きそうな顔なんかしてないよ。
殴ってやりたいのをぐっとこらえているだけだ。
お姉ちゃん少しオマケしてくれた。
次ぎはスーパーの肉売場でよく見かける、1グラム何円という牛の形をしたプライスカードを発見。
めちゃくちゃ欲しい、絶対欲しい。
そんなの買ってどうするんだ、肉屋でも始める気か。
だって本当に欲しいんだもん。
オヤジに値段を聞いてみた。
「高かー」
ただの牛のプライスカードに誰がそんなお金払うんだよ。
そのプライスカードはプラチナかなんかで出来ているのか。
オヤジにディスカウントしてくれって言ったら、このクソオヤジ、お前ちょっとおかしいんじゃないかというゼスチャーをした。
ここでオヤジめがけて飛び蹴り一発。
誰がおかしいってお前の方がおかしいだろ。
ワイン片手に接客する定員どこにいるんだ。
お前は貴族か。
オヤジもう酔っぱらってんじゃないのか、このクソジジイ。
グルグル周ってたら、警察官に捕まって連行される容疑者を見てしまった。
やった、これでスリ1名逮捕。
私もいつスリにやられるかもわからない、改めてかばんを握り締める。
壁一面にキーホルーダーをディスプレイしているお店を発見。
全てアンティークのキーホルダーで一点ものだ。
かわいいのがうじゃうじゃしている。
ここでも何点か選んでディスカウントをお願いした。
もっと買ってくれなきゃサービスできないよって言われたが、少しオマケしてくれた。
見たい所も見たし、そろそろホテルに戻るとするか。
歩きながら服片手に道行く人を相手に販売している人が近づいてくる。
これこそ移動販売。
「スウォッチ」って言いながらお兄ちゃんがついて来た。
お兄ちゃんそのスウォッチ本物か。
そのスウォッチ買って関空で捕まるなんて絶対嫌だからね。
道いっぱい人だらけで押し合いながらメトロに行く。

帰りにマクドナルドでハンバーガーを買う。
店内は日曜日で家族連れでいっぱいだ。
日本では100円出せばハンバーガーとおつりが貰える。
フランスはそんなわけにはいかない。
500円出してハンバーガーとおつりが貰えるぐらい高い。
なんて世の中なんだ。
日本がおかし過ぎるんだろうな。
テイクアウトにしてホテルで頂く。
そろそろ同行者の彼女と別れる時が来た。
自分独りだとパニックになっていた事も、彼女のおかげで助かった。
その彼女に励まされながらメトロで別れる事にした。

さぁ、ここから本当に独りだ。
急に心細くなってきた。
メトロの乗客も皆スリに見える。
「大丈夫、怖くない、大丈夫」って独り言をいいながら自分が乗る路線を探す。
ホームに入ったものの、路線が見つからず一旦ホームから出る事にした。
ルートマップでやっと探し当て、ホームに入ろうと思い切符を改札口に入れたが、ブザーが鳴り入る事が出来ない。
違う改札口を試す。
やっぱり入れない。
改札口全部を試す。
全然ダメ。
何でやねん。
5分前までは大丈夫だったのに。
インフォメーションでゼスチャーと「チケット、クロス」を連発する。
ここでなぜ私がクロスと言ったか説明しよう。
ゼスチャーで切符が使えない事を手で×ってしたんだ。
×と言ったらクロスだろ、だから「チケット、クロス」になったというわけ。
こんなトンチンカンなゼスチャーをわかってくれたのか、インフォメーションのお兄ちゃんは切符を機械に通し直してくれた。
磁気がバカになってたのかなぁ。
彼女と別れた途端トラブルだ。
彼女がいない事を改めて感じ、メトロで泣きそうになる。

メトロを乗り継ぎ日曜日でも開いている出来たてホヤホヤのショッピングセンターに行く。
デザインがきれいなマンガを発見。
こんな色使いとデザインはなかなか日本にはない。
何点か選んで購入する。
日曜日開いているお店は限られるので、このショッピングセンターも人がいっぱいだ。
香り物を売っているお店、キッチン雑貨を売っているお店、うさぎや犬を売っているペットショップ等全部見て周った。
が、めぼしい物は見つからなかった。
フランスに着いてからちょっとハードスケジュールで私もバテ気味。
今日は気分もブルーだし、開いているお店もないので早々に切り上げ帰る事にする。
来た道を帰っているつもりだがメトロの駅にたどり着かない。
私は地図が読めない女なんだ。
完全に道に迷った。
今自分がいる所さえもわからない。
私は今どこにいるんですかって聞きたいけど、人通りが少ない為聞く事さえも出来ない。
あーどうしよう、また泣きそうになってきた。
やさしそうな家族グループを発見。
ここであの家族グループに聞かないと、私はほんとに迷子になってしまう。
お母さんにメトロの場所を聞く。
あっちだよって途中まで一緒について来てくれた。
なんてやさしいお母さんなんだ。
やっぱり反対方向に歩いていたよ。
これじゃ、どこまで行ってもメトロになんか乗れっこないよね。
これでやっとホテルに帰れる。
途中の公衆電話から家族に電話をする。
日本は夜中の12時。
家族の声を聞いて急に寂しくなり、涙で何も話せなかった。
自分で買い付けに行きたいと懇願した事をこの時はじめて後悔した。

本日の買い付け歩数:16918歩